Artisans & More

2025/06/21 10:00

冷蔵庫の奥から、鹿のスネ肉を取り出したとき、
自分のことをちょっとだけ“できる大人”のように思えた。
もちろん、ただの平日だ。仕事も疲れたし、洗濯物もまだ干しっぱなし。

でも、今日は赤ワインを開けると決めていた。
理由なんていらない。ただなんとなく「そういう日」だっただけ。

ソフリットの香りが部屋に広がると、
小さなアパートのキッチンが、すこしだけ舞台に変わる。
照明は蛍光灯だけ。音楽もない。だけど、ワイングラスを一つ出すだけで、
この一皿が“ごちそう”に変わる気がした。

鹿スネ肉は、驚くほどやわらかかった。
こちらが何かを“頑張る”前から、すでに仕上がっている。
圧力調理で丁寧に火を入れられたそれは、
ただ温めただけなのに、まるで何日もかけて煮込んだような深みがある。

器に盛るだけで、料理上手になった気がしてしまうのは、
素材と、見えない誰かの手間のおかげだ。

テレビのニュースは途中で消して、
スマホも裏返して、
皿の上の鹿肉とだけ、静かに向き合ってみる。

思えば、誰かと食べるごはんも好きだけど、
こういう「自分のための一皿」って、
少しだけ人生の手綱を握っている気がする。

ほんのすこしの赤ワインと、ほんのすこしの手間と、
そして、いい素材。

それだけで、今日が違って見えるのだから、
食卓って不思議な舞台装置だ。

使用したジビエ:鹿スネ肉の赤ワイン煮込み
鹿スネ肉(圧力調理済み)
赤ワイン・ソフリット・乾燥ポルチーニ・トマトペースト
クミン・ローリエ・パプリカパウダー・塩胡椒
仕上げにブラウンマッシュルームを追加


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