2025/10/11 00:00
パンでもケーキでもない。
けれど、この一片は確かに「切り分ける歓び」の仲間だ。
焼き色の衣は額縁、ピンクは森の夕暮れ。栗や木の実がぽつりと現れ、断面は地図みたいに語り出す。
野生の香りは騒がない。無添加の仕事は、香りを静かに整えるから、野生肉の味が輪郭のまま届く。

——ところで、パテ・アンクルートとは?
要は**“肉のテリーヌを生地で包んで焼いたもの”**。
切り分けるたびに、ゼリー、脂、粗挽きが層で鳴る。
強い香辛料で覆わず、素材の声を前に出すのが美徳だ。
同じ“挽きもの”でも、ジビエ ソーセージが歌うなら、アンクルートは詩を読む。
その“静けさ”が、なぜ贅沢か
脂でごまかさない、香りで隠さない。
噛むほどに鹿の鉄分が小さく鐘を鳴らし、猪の脂が後口に柔らかな照明を当てる。
「市販のソーセージとは別の食べものだ」と感じる瞬間は、無添加 加工肉ならではの透明感から生まれる。
食べ方は“正しいワガママ”で
冷蔵で少し戻し、温めた刃で薄くスパッと。
厚めなら肉の主張、薄めなら香りのレイヤー。パンとピクルス、辛子少々。赤ワインでも、濃い緑茶でもいい。
主菜にも、前菜にも、夜更けの一皿にも変わる——人格のある料理だ。
地方食材“おすすめ”という編集
中身は木更津で整えた鹿や猪。
「地方食材 おすすめ」という言葉の向こうには、季節の機嫌を見極めた編集がある。
いま届けたい声色の肉を選び、ひとつの額縁に収めて食卓へ。