2025/11/18 21:56
国の“未来の食卓リスト”に、ジビエが載った日
FOOD SHIFTセレクションは、農林水産省が進める「ニッポンフードシフト」の一環として、
“これからの時代にふさわしい食のかたち”を選ぶ取り組みだ。
地産地消、国産農林水産物の消費拡大、
みどりの食料システム戦略、家庭備蓄、インバウンド——
なんだか難しそうな言葉が並ぶけれど、要するにこういうことだと思う。
「ちゃんとしたものを、ちゃんと未来につなぎたい」
その“ちゃんとしたもの”の中に、
木更津の猪と鹿が、そっと居場所を見つけた。
ジビエはまだまだ“マニアックな食材”だと思われている。
それが、国の公式なセレクションの中で
「地域・環境・食の未来を変える逸品」として名指しされた。
それは、現場の職人や猟師さん、加工施設で手を動かし続けてきた人たちにとって、
ひとつの「答え合わせ」みたいな出来事だった。
「Steak haché」は、祝杯のための肉じゃない
だからといって、この肉は“受賞記念のごちそう”で終わってほしくない。
「木更津ぼたんSteak haché」は、
フランス料理でいう、粗びき肉のステーキ。
木更津の山で育った猪の肉を粗く挽き、
つなぎは卵だけ、味付けは自然の素材だけ。
余計なものをできる限り削ぎ落として、
“猪の肉そのもの”に責任を取るようなレシピになっている。
口に入れて噛みしめると、まず驚くのは「雑味のなさ」だ。
脂はきれいに切れ、くどさも重たさもなく、ただ純粋な旨みだけが残る。
それでいて、どこか奥に、野生の記憶のような輪郭がちゃんとある。
こってりでもなく、あっさりでもない、
「ちゃんとしてる肉」の味がする。
FOOD SHIFTセレクションの入賞は、
この味が「環境にも、地域にも、未来にもちゃんとしている」と
背中を押してもらえた、そんな出来事だったのだと思う。
鹿スネ肉は、“プロの喜び”を連れてくる
もうひとつの入賞品、「圧力調理で柔らかさを極めた鹿スネ肉」は、
プロの現場の「助かった!」が凝縮されたような商品だ。
スネ肉は、よく動かす部位で、筋も多い。
そのぶん味は濃いけれど、下処理に手間がかかり、火入れも難しい。
そこで、筋を丁寧に取り除き、
圧力調理で“煮込み一歩手前”の柔らかさまで仕上げた。
うま味や鉄分は逃さずに、そのままキッチンにバトンを渡せる状態で。
コンフィ風に軽く焼けば、そのまま一皿になる。
ほぐしてパスタソースにすれば、
「これ、本当に鹿?」と聞かれるくらい、なめらかなコクになる。
FOOD SHIFTの入賞は、
こうした「現場の知恵」が、社会的にも評価されたということでもある。
ただの“便利な半加工品”ではなく、
フードロスや人手不足、国産原料の価値を守ろうとする
ささやかな工夫の結晶として、認められたのだ。
ジビエは、害獣じゃなくて、「関係性の味」だ
ジビエの話になると、すぐに「鳥獣被害」という言葉が出てくる。
たしかにそれは現実だし、向き合わなければならない課題だ。
でも、Artisan NIPPONが見ているのは、
被害だけではない。
木更津の山は、猪や鹿にとって楽園のような場所だ。
温暖な気候、豊かなドングリ。
その環境が、脂の香りや肉の質をつくる。
そこに猟師が入り、罠を仕掛け、
一頭ずつ命と向き合う。
加工施設で職人が受け取り、
食べる人の食卓までバトンをつなぐ。
その一連の「関係性」そのものが、
皿のうえの味になっている——そう思う。
FOOD SHIFTセレクションの入賞は、
この「関係性の味」が、
日本の食の未来を語るうえで、
決して脇役ではないと認めてもらえたサインでもある。
あなたの一口が、次の一歩になる
今回入賞した二品に続いて、
Artisan NIPPONは、木更津の猪と鹿がもつ力を、
無添加・素材本位の設計でていねいに引き出し、
“続けられるジビエ”として届けていきます。
牛でも豚でも鶏でもない、
野生ならではの奥行きと清らかな旨みを、もっと身近に、もっと自由に。
まずは、ひと口。
あなたの食卓にのぼったその一皿が、
FOOD SHIFTの理念を、いちばんおいしいかたちで体現してくれるはずです。
