Artisans & More

2026/02/21 00:00

料理って、ずるい。
作るのは時間がかかるのに、食べるのはあっという間。
「え、もう終わり?」って、箸を置いた瞬間に思う。
で、作った側はたぶん、もっと思ってる。

でもね。それでいいんだよね。

本当においしい料理を食べてもらいたい人って、だらだらお皿の上に残るのを、たぶん嫌う。
嫌うというか、悔しがる。
フライパンから下ろした瞬間が、いちばんうまいって知ってるから。
できればその瞬間に、全部食べてもらいたい。
「はい、今!」って、時計を鳴らしたいくらいに。

作るのに何日かかろうが、食べるのは一瞬でいい。
むしろ一瞬だからいい。
一番おいしい瞬間に、全部を持っていけるから。

ジビエは、時間が詰まった肉だ

ジビエなんて、まさにそう。
漁師さんが山から下ろして、
加工処理施設の人がさばいて、
冷やして、整えて、運んで、
ようやく食卓に届く。

そこまでに、ものすごい時間と手間がかかってる。
しかも、ただ時間がかかるんじゃない。
“失敗できない時間”が、ずっと続く。
温度、スピード、判断。
ちょっと遅れたら、香りが変わる。
ちょっと雑だと、命が雑になる。
そんな種類の時間。

なのに、食べるのは一瞬。
肉が熱でほどける、その一瞬。
香りが立って、脂がほどけて、
「あ、うまい」って言わせる、その一瞬。

それでいい。
いや、その一瞬のために、全部がある。

“すぐ食べてほしい”は、優しさじゃなくて執念

僕が好きなのはね、
現場の人たち——漁師も、加工処理施設も、料理人も——
みんな「すぐ食べてほしい」って言うところ。

ゆっくり味わって、なんて言わない。
むしろ逆。

「焼けたらすぐ」
「切ったらすぐ」
「冷める前に全部いって」

あれって、せっかちなんじゃない。
愛情、でもなくて、たぶん執念なんだよね。
何日も何時間もかけてきた人ほど、最後の一瞬を逃したくない。
“この瞬間が完成形だ”って、知ってるから。

だから、お皿の上に料理がだらだら残るのが嫌なんだと思う。
残ってる料理を見ると、
「いま一番うまい瞬間が、通り過ぎてる」ってわかっちゃうから。

あらゆる時間と手間と思いが、噛んだ一瞬に集まる

僕らは、その一瞬のために何日もかけてる。
漁師が山で積んだ時間。
処理施設が整えた時間。
料理人が火で仕上げた時間。
その全部が、噛んだ一瞬に集まる。

「めちゃくちゃ美味しい」って思ってもらえるために、全てをかけてる。
そう言っても過言じゃない。ほんとに。

なんて言ったらいいんだろうね、こういうお肉。
健康にいいとか、サステナブルとか、そういう話もできるけど、たぶん違う。
もっと単純で、もっと人間っぽい。

これは、時間が詰まった肉。
そして、時間を一瞬で報われさせる肉。

最後に、ひとつだけお願いがあるとしたら。
焼けたら、すぐ食べてほしい。
写真もいい。説明もいい。

でもその前に、まず一口。

一瞬のために何日もかけた人たちが、
いちばん喜ぶのは、たぶんそこだから。

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