Artisans & More

2026/03/06 22:31

ジビエをべた人が、だいたい最初に言うセリフがある。

「うわ、ない!」

テレビでも、会食でも、友だちとのごはんでも。
なぜかみんなここに着地する。
たぶん、優しさなんだと思う。
「思ってたより平気だったよ」って伝えたい、あの感じ。

でもね。
“癖がない”って、褒め言葉じゃないことがある。

牛も鶏も豚も、ちゃんと「味」がする

考えてみてほしい。
牛肉を食べて「癖がない!」って、あんまり言わない。
鶏肉でも、豚肉でも、言わない。

だって、ちゃんと牛の味がするし、鶏の味がするし、豚の味がする。
それは“癖”じゃなくて、個性だ。
むしろ、その個性があるから美味しい。

じゃあ、鹿肉や猪肉はどうか。
当然、鹿の味がする。猪の味がする。
それでいいじゃん、と思う。

「癖がある前提」が、味わいを邪魔している

“癖がない”が褒め言葉になるのって、
逆に言えば「鹿や猪は癖があるものだ」という前提が、最初からあるってことだ。

その前提が、もったいない。
味をシンプルに楽しむ邪魔をする。

本当はこう言えばいい。
「わ、猪の味だ」
「わ、鹿の味だ」
それで十分、最高なんだよね。

言うなら「思ってたより◯◯じゃない」が正しい

もちろん、言いたいことはわかる。
たぶん、こういう意味のはずだ。

  • 思ってたよりくさくない

  • 思ってたより硬くない

  • 思ってたより食べやすい

それは、すごく大事な発見だし、ちゃんと褒め言葉だ。
でも、それを全部まとめて「癖がない」にしてしまうと、
鹿や猪の味そのものまで消えてしまう。

ジビエを本当に美味しいと思っている側からすると、ちょっと寂しい。

結び:もっと「鹿の味」「猪の味」を見つめてほしい

癖がない、じゃない。
ちゃんと鹿だし、ちゃんと猪なんです。

怖いのは“味”じゃなくて、たぶん“先入観”。
だからこそ、ひと口目からは、こう言ってほしい。

「鹿、うまい」
「猪、うまい」

それだけで、だいぶ世界が開く。

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