Artisans & More

2026/04/20 10:00

炊き上がった茶碗を前に、少し黙ってしまうことがある。

湯気が立ち、米粒がぴんと立っている。箸を入れた瞬間の、あの手応え。そして、噛んだ先で静かにふわりと立ち上がる甘みと香り——。

「馥郁」という言葉がある。花や香りがゆたかに漂う様を指す、少し古い日本語だ。こんなにぴったりくる言葉が、まさかお米に使えるとは思っていなかった。

大粒の弾力と、噛み進めた先の余韻

「跳ね夢(はねゆめ)」は、栃木・大田原で育つ「とちぎの星」という品種だ。大粒で、噛み応えがある。最初の一口で「あ、しっかりしてる」と思う。でも、それで終わらない。

噛み進めるうちに、甘みが出てくる。旨みが出てくる。まるで肉料理の肉汁のように、噛むほど内側から何かがにじんでくる。米でこういう体験をするのは、初めてだった。

それは、この米の密度が違うからだと思う。一粒の中に、何かが詰まっている。

足跡の数だけ、米は甘くなる

この米を作る生産者は、完璧な地質と地形条件を前にして、あえて困難な道を選んだ。土着の微生物との共生、持続的な生産への挑戦。田んぼへ通い詰めた。その足跡が、扇状地の豊かな地層と重なり合って、一粒に圧倒的な密度を与えていく。

彼が刻んだ足跡の数だけ、米は甘くなり、強くなる。

生産者の哲学と、土地の力と、積み重ねた時間。それが一粒に折りたたまれている——そう思って食べると、また少し違って感じる。

山下さんが「跳ねる」と見抜いた一粒

五つ星お米マイスターの山下治男さんが、この米を単品で「跳ねる」と見抜いた。骨董の世界で培った目利きは、米にも働く。産地のデータより、山下さんの「これだ」の方が信頼できる——そういう人が、この米を選んだ。

名前の由来は、炊き上がった瞬間に米粒がぴんと立って輝く景色。それを見て「夢みたいだ」と思ったから、「跳ね夢」になった。詩人のような命名だが、山下さんはそういう人だ。

塩だけでいい。何もつけなくてもいい。噛むほどに旨い、という言葉の正体を、ぜひ一度確かめてほしい。

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