Artisans & More

2026/10/16 10:00

蓋を開ける、という動作が、こんなに晴れやかになる箱はそう多くない。


五つずつ、五列。25の小さな升に並ぶ料理は、まるで新年のために仕立てられた宝石箱だ。鹿、猪、ヒグマ、キョン、ウリ坊。肉が変われば香りが変わり、部位が変われば歯ざわりが変わる。さらに燻製、熟成、コンフィ、リエット、テリーヌ、パテ・アン・クルートと、フランスのシャルキュトリの技が、その違いを一つずつ浮かび上がらせている。

25品は、肉と交わした25通りの対話


手がけたのは、千葉県木更津のKURKKU FIELDSでシャルキュトリを追究する岡田修氏だ。野性の肉は、均一ではない。だからこそ、決まった型に肉を押し込むのではなく、その個体、その部位に似合う方法を探す。塩を入れ、火を操り、燻し、待つ。25品は、岡田氏が肉と交わした25通りの対話でもある。

フランスの技と、日本の味が同じ箱に座る


その中に、白味噌や淡口醤油、塩麹、ごぼう、地元の栗といった日本の味が静かに差し込む。フランス料理を和風にしたのでも、お節を洋風にしたのでもない。二つの食文化が、互いの輪郭を消さずに同じ箱に座っている。

新しい年の、最初の冒険


お正月は、一年でいちばん堂々と食卓を囲める日だと思う。少しずつ切り分け、「これは鹿」「こっちは猪」と話しながら、知らなかった味へ進んでいく。

新しい年の最初の冒険は、山ではなく、一段の重箱から始まる。

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